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立ち別れ君がいまさば磯城島の
人は我れじく斎ひて待たむ

歌の意味
別れてあなたが旅立って行かれたならば、大和の国の人々は皆、私と同じように身を慎んであなたの無事を祈って待つことだろう。
鑑賞
巻第十九 4280

詞書は前の歌に続き「二十七日、林王の宅にして但馬按察使橘奈良麻呂朝臣を餞する宴の歌三首」
 橘奈良麻呂の送別の宴での二首目で、あなたが別れて旅立って行かれたら、大和の国の人は皆、私と同じように身を慎んで無事を祈りながら帰りを待つだろうと、奈良麻呂への敬慕を述べている。
 自分ひとりではなく大和の人々皆が待つと言うことで、奈良麻呂の人望を讃えている。橘奈良麻呂は橘諸兄の子で、このとき但馬などの諸国の国司を監察する按察使として都を離れることになった。左注に「右の一首は、右京少進大伴宿祢黒麻呂」とある。
 作者の大伴黒麻呂は、大伴氏の一族の官人で、このころ右京少進であった。

 初句「立ち別れ」は、別れて旅立つことを示している。
 二句「君がいまさば」の「います」は「行く」の尊敬語で、あなたが行かれたならばの意となる。
 三句「磯城島の」の「磯城島」は大和の国の意で、都の人々を示している。
 四句「人は我れじく」の「じく」は〜のようにの意で、人々も私と同じようにと述べている。
 結句「斎ひて待たむ」の「斎ふ」は身を慎んで無事を祈る意で、祈りつつ待つだろうと結んでいる。

しきしま:大和の国
いはふ:身を清め慎んで無事を祈る
作者
大伴黒麻呂
出典
万葉集
前の歌
能登川の後には逢はむしましくも 別るといへば悲しくもあるか
次の歌
白雪の降り敷く山を越え行かむ 君をぞもとな息の緒に思ふ