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白雪の降り敷く山を越え行かむ
君をぞもとな息の緒に思ふ

歌の意味
白雪が降り積もる山を越えて行くであろうあなたのことを、むやみに命がけで思っていることだ。
鑑賞
巻第十九 4281

詞書は前の歌に続き「二十七日、林王の宅にして但馬按察使橘奈良麻呂朝臣を餞する宴の歌三首」
 橘奈良麻呂の送別の宴での三首目で、白雪の降り積もる山を越えて行くであろうあなたを、むやみに命がけで思っていると、冬の山越えの旅を案じている。
 左注に「左大臣、尾を換へて云はく、いきのをにする。しかれどもなほし喩して曰く、前の如く誦め」とあり、同席した左大臣橘諸兄が結句を「息の緒にする」と改めてみせたが、やはり元のとおりに誦めと諭したという。原文には二つの結句が並記されているが、ここでは諸兄の言に従い、元の「息の緒に思ふ」を本文とする。左注に「右の一首は、少納言大伴宿祢家持」とある。結句は字余りである。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平勝宝三年(751)に少納言に任じられて越中から平城京に戻り、都の官人として宮廷の宴にも列していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる歌人である。

 初句「白雪の」は、冬の山を覆う白い雪を示し、旅の厳しさを思わせている。
 二句「降り敷く山を」は、雪が一面に降り積もる山をの意で、但馬への道中の山越えを示している。
 三句「越え行かむ」の「む」は推量で、これから越えて行くであろうの意となる。
 四句「君をぞもとな」の「ぞ」は係助詞で結句と係り結びをなし、「もとな」はむやみに、わけもなくの意で、抑えがたい思いを表している。
 結句「息の緒に思ふ」は字余りで、「息の緒」は命の意、命がけで思うと深い心配を表し、「ぞ」の結びとして連体形「思ふ」で結んでいる。

いきのを:命、命の続く限り
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
立ち別れ君がいまさば磯城島の 人は我れじく斎ひて待たむ
次の歌
言繁み相問はなくに梅の花 雪にしをれてうつろはむかも