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言繁み相問はなくに梅の花
雪にしをれてうつろはむかも

歌の意味
人の噂がうるさいので訪ねることもしないでいるうちに、梅の花は雪にしおれて散ってしまうのではないだろうか。
鑑賞
巻第十九 4282

詞書「五年正月四日、治部少輔石上朝臣宅嗣の家にして宴する歌三首」
 天平勝宝五年(753)正月四日、自邸での宴で主人の石上宅嗣が詠んだ歌で、人の噂がうるさいので訪ねずにいるうちに、梅の花は雪にしおれて散ってしまうのではないかと詠んでいる。梅を恋しい女性になぞらえ、人目をはばかって逢えない恋の嘆きを譬えたものと解される。
 宴席の挨拶として恋の譬喩歌の趣向を用い、雪の中の梅という正月の景を巧みに取り込んでいる。左注に「右の一首は、主人石上朝臣宅嗣」とある。
 作者の石上宅嗣は、石上麻呂の孫で、のちに大納言に至った。文人として名高く、私邸に芸亭という日本最初の公開図書館を設けたことで知られる。

 初句「言繁み」の「言」は人の噂、「〜み」は原因を表し、噂がうるさいのでの意となる。
 二句「相問はなくに」の「相問ふ」は訪ねる意、「なくに」は〜しないのにで、訪ねもしないでいるうちにの意となる。
 三句「梅の花」は、恋しい女性を譬えた花として中央に置かれている。
 四句「雪にしをれて」の「しをる」はしおれる意で、雪に打たれて弱るさまを示している。
 結句「うつろはむかも」の「うつろふ」は色があせる、散る意、「かも」は疑問と詠嘆で、散ってしまうのではと案じて結んでいる。

あひとふ:訪ね合う、訪れる
しをる:しおれる
うつろふ:色があせる、散る
作者
石上宅嗣
出典
万葉集
前の歌
白雪の降り敷く山を越え行かむ 君をぞもとな息の緒に思ふ
次の歌
梅の花咲けるが中にふふめるは 恋か隠れる雪を待つとか