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うらうらに照れる春日にひばり上がり
心悲しも独し思へば

歌の意味
うららかに照っている春の日に、ひばりが空高く舞い上がり、心が悲しい。ひとりで物思いをしていると。
鑑賞
巻第十九 4292

詞書「二十五日に作る歌一首」
 春愁三首の結びで、巻十九の巻末を飾る家持の代表作である。うららかに照る春の日にひばりが空高く舞い上がるのを見ながら、ひとり物思いにふけると心が悲しいと、明るい春の中の孤独な憂愁を詠んでいる。
 左注に「春日遅々として、鶬鶊正に啼く。悽惆の意、歌にあらずは撥ひ難し。よりてこの歌を作り、式ちて締緒を展ぶ」とあり、のどかな春の日に鳴くひばりを聞いて、悲しみは歌でなければ払いがたいので、この歌を作って結ぼれた心をのべたという。漢詩文の素養に裏打ちされた自覚的な作歌である。
 左注はさらに、この巻で作者名を記さずに年月や場所、事情だけを記した歌はすべて大伴家持の作であると述べており、巻十九が家持の歌日記としての性格をもつことを示している。巻頭の本巻の第四千百三十九首の華やかな春と、巻末の春愁とが呼応して一巻を閉じている。
 作者の大伴家持は、大納言大伴旅人の子で、天平勝宝三年(751)に少納言に任じられて越中から平城京に戻り、都の官人として宮廷の宴にも列していた。万葉集の編纂に深く関わったとされる歌人である。

 初句「うらうらに」は、日がうららかに照るさまをいい、のどかな春の日を示している。
 二句「照れる春日に」は、照り輝く春の日にの意で、明るい情景を描いている。
 三句「ひばり上がり」は字余りで、ひばりが空高く舞い上がるさまを示し、明るさと上昇の動きが下の句の沈む心と対照をなしている。
 四句「心悲しも」の「も」は詠嘆で、明るい景の中での悲しみを率直に表し、ここで切れる四句切れとなっている。
 結句「独し思へば」の「し」は強意で、ひとりで物思いをしているとと、倒置によって悲しみの理由を最後に示して結んでいる。

ひばり:ヒバリ科の鳥、春に空高く舞い上がってさえずる
ていしよ:締緒、結ぼれた心
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
我が宿のい笹群竹吹く風の 音のかそけきこの夕かも
次の歌
あしひきの山行きしかば山人の 我れに得しめし山づとぞこれ