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あしひきの山に行きけむ山人の
心も知らず山人や誰れ

歌の意味
山に行ったという山人の心もわからない。その山人とはいったい誰なのか。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4294

詞書は前の歌に続き「山村に幸行しし時の歌二首」とあり、さらに「舎人親王、詔に応へて和へ奉る歌一首」
 山に行ったという山人の心はわからない、その山人とは誰なのかと、前歌の問いかけに問い返す形で応じた一首である。太上天皇が山人から土産を得たと詠んだのに対し、山へ行ったその人こそ山人ではないかとほのめかし、天皇を仙人になぞらえて讃える機知の歌と解されている。
 左注は前歌と同じで、天平勝宝五年五月、山田史土麻呂が家持に語り伝えた古歌である。
 作者の舎人親王は天武天皇の皇子で、日本書紀の編纂を主宰し、知太政官事を務めた。淳仁天皇の父である。

 初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞で、前歌の初句をそのまま受けている。
 二句「山に行きけむ」の「けむ」は過去の伝聞推量で、山に行ったとかいうの意である。前歌の「山行きしかば」を受け、行ったのは誰かをぼかしている。
 三句「山人の」は前歌の「山人」を受ける。一首に「山」の語を四度用い、言葉を重ねる遊びの趣がある。
 四句「心も知らず」で句切れとなり、その山人の心が測りかねるという。
 結句「山人や誰れ」の「や」は疑問の係助詞で、山人とは誰かと問い返して結ぶ。答えを相手に委ねる結び方が応詔の歌にふさわしい戯れとなっている。

けむ:過去の事柄を伝え聞いて推し量る意
作者
舎人親王
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山行きしかば山人の 我れに得しめし山づとぞこれ
次の歌
高円の尾花吹き越す秋風に 紐解き開けな直ならずとも