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初秋風涼しき夕解かむとぞ
紐は結びし妹に逢はむため

歌の意味
初秋の風が涼しく吹く夕べに解こうと思って、この紐は結んでおいたのだ。妻に逢うために。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4306

詞書「七夕の歌八首」
 初秋の涼しい夕べに解こうと紐を結んでおいたのだ、妻に逢うためにと、牽牛の立場から年に一度の逢瀬を待つ心を詠んだ一首である。左注によれば、家持が独り天の川を仰いで作った八首の一首目である。別れの際に互いに紐を結び、再会の時に解くという習俗を踏まえ、一年を待った時間の長さを紐に託している。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深く関わったとされる歌人である。この時は兵部少輔であった。

 初句「初秋風」は字余りで、七月七日の季節を告げる初秋の風である。
 二句「涼しき夕」は逢瀬の時である夕べを示し、秋の訪れの爽やかさを添えている。
 三句「解かむとぞ」の「ぞ」は係助詞で、結びは四句の連体形「し」となる。解こうと思ってこそと、紐を結んだ目的を強調する。
 四句「紐は結びし」は「ぞ」を受けて過去の「き」の連体形「し」で結ぶ。ここで句切れとなる。
 結句「妹に逢はむため」は倒置で、紐を解く時が妻に逢う時であることを後から明かしている。一連の後半で「紐解きて」と詠む歌と照応している。

ひも:衣の紐。別れる際に結び合い、逢う時に解いた
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
木の暗の茂き峰の上を霍公鳥 鳴きて越ゆなり今し来らしも
次の歌
秋と言へば心ぞ痛きうたて異に 花になそへて見まく欲りかも