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秋の野に露負へる萩を手折らずて
あたら盛りを過ぐしてむとか

歌の意味
秋の野で露を帯びた萩を手折らないで、惜しい花の盛りを空しく過ごしてしまおうというのか。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4318

詞書なし。左注は前の歌に続き、家持が独り秋の野を憶ひて作る六首の一首である
 秋の野の露を帯びた萩を手折らずに、惜しい盛りを過ごしてしまうのかと、野に出られぬまま花の盛りが過ぎることを惜しんだ一首である。左注によれば、家持が独り秋の野を思って作った六首の四首目で、前歌の「今こそ行かめ」という心の弾みに対し、行けずにいる嘆きを重ねている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、この時は兵部少輔であった。

 初句「秋の野に」は前歌の初句「秋野には」を受けて同じ場所を示している。
 二句「露負へる萩を」は露を帯びた萩をの意で、「負ふ」は身に受ける、帯びる意である。
 三句「手折らずて」は手折らないでの意で、花を手にする楽しみを果たせぬことをいう。
 四句「あたら盛りを」の「あたら」は惜しいことにの意で、もったいない花の盛りをという。
 結句「過ぐしてむとか」の「て」は完了、「む」は意志で、「とか」は問いかけの意を表す。過ごしてしまおうというのかと自らを責めるように結ぶ。

おふ:身に受ける。帯びる
たをる:手で折り取る
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
秋野には今こそ行かめもののふの 男女の花にほひ見に
次の歌
高円の秋野の上の朝霧に 妻呼ぶ壮鹿出で立つらむか