我が妻はいたく恋ひらし飲む水に
影さへ見えてよに忘られず
- 歌の意味
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私の妻はひどく私を恋しがっているらしい。飲む水に面影まで映って見えて、決して忘れられない。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4322
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
妻がひどく恋しがっているらしい、飲む水にまで面影が映って忘れられないと、旅の途上で妻を思う一首である。相手が強く思うと夢や影に現れるという当時の考え方を踏まえ、水に映る面影を妻の思いの表れと受け止めている。遠江国から進上された歌の二首目で、「かご」は「かげ」の訛りである。
作者の若倭部身麻呂は遠江国麁玉郡の主帳丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。主帳丁は防人の中で記録を担った者とされる。
初句「我が妻は」は思いの主体である妻を示し、一首の主題を立てている。
二句「いたく恋ひらし」の「らし」は根拠に基づく推定で、下の句の面影がその根拠である。ここで句切れとなる。
三句「飲む水に」は旅の途中で口にする水で、日々の暮らしの中に妻が現れることを示す。
四句「影さへ見えて」の「影」は面影の意で、方言で「かご」と記される。「さへ」は添加で、面影までもの意である。
結句「よに忘られず」の「よに」は打消を伴い決して、の意を表す。決して忘れられないと結ぶ。
かげ:姿。面影
- 作者
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若倭部身麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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畏きや命被り明日ゆりや 草がむた寝む妹なしにして
- 次の歌
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時々の花は咲けども何すれぞ 母とふ花の咲き出来ずけむ