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大君の命畏み磯に触り
海原渡る父母を置きて

歌の意味
大君のご命令を恐れ謹んで、磯に触れながら海原を渡って行く。父母を後に残して。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4328

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 大君の命令を謹んで受け、磯伝いに海原を渡って行く、父母を残してと、船旅に出る防人の覚悟と悲しみを詠んだ一首である。左注によれば、相模国の防人部領使であった国守藤原宿奈麻呂が二月七日に八首を進上し、拙劣な五首を除いて三首が載せられた。その一首目である。「うのはら」は「うなはら」の訛りである。
 作者の丈部人麻呂は相模国の助丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。助丁は防人の長を補佐する者とされる。

 初句「大君の」は防人の歌に繰り返し現れる句で、命令の主を示す。
 二句「命畏み」は命令を恐れ謹んでの意で、防人の歌の定型的な句である。
 三句「磯に触り」は岸辺の磯に触れるように沿っての意で、沿岸を進む船旅を示す。
 四句「海原渡る」は難波から筑紫への海路を行くことをいう。ここで句切れとなる。
 結句「父母を置きて」は倒置で、父母を残して行く悲しみを結句に据えている。

ふる:触れる
作者
丈部人麻呂
出典
万葉集
前の歌
我が妻も絵に描き取らむ暇もが 旅行く我れは見つつ偲はむ
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八十国は難波に集ひ船かざり 我がせむ日ろを見も人もがも