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防人の堀江漕ぎ出る伊豆手船
楫取る間なく恋は繁けむ

歌の意味
防人が難波の堀江を漕ぎ出していく伊豆手船の、楫を操る手の休む間もないように、絶え間なく恋しさは募ることだろう。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4336

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 堀江を漕ぎ出す伊豆手船の楫を操る間もないように、防人の恋しさは絶え間なく募るだろうと思いやった一首である。左注によれば、二月九日に大伴家持が作った三首の結びである。前歌で航海の無事を祈ったのに続き、船上の防人の心へと思いを移している。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、この時は兵部少輔であった。

 初句「防人の」は船を漕ぐ主体を示す。
 二句「堀江漕ぎ出る」の「堀江」は難波に開削された水路で、防人の船出の地である。
 三句「伊豆手船」は伊豆国で造られた型の船とされ、初句から三句までが、四句の「楫取る間なく」を導く序詞となっている。
 四句「楫取る間なく」は楫を操る手を休める間もないの意で、序詞の景から恋の絶え間なさへと転じている。
 結句「恋は繁けむ」の「繁し」は絶え間なく多い意で、「む」は推量である。恋しさが絶え間なく募るだろうと結ぶ。

いづてぶね:伊豆国で造られた型の船
ほりえ:難波に開削された水路
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
今替る新防人が船出する 海原の上に波なさきそね
次の歌
水鳥の立ちの急ぎに父母に 物言はず来にて今ぞ悔しき