水鳥の立ちの急ぎに父母に
物言はず来にて今ぞ悔しき
- 歌の意味
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水鳥が飛び立つような慌ただしい出発の騒ぎに、父母にろくに言葉もかけずに来てしまって、今になって悔しい。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4337
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
慌ただしい出立に紛れて父母に言葉もかけずに来てしまい、今になって悔しいと、旅の途上でこみ上げる後悔を詠んだ一首である。左注によれば、駿河国の防人部領使であった国守布勢朝臣人主が、二月七日付けで実際には九日に二十首を進上し、拙劣な歌を除いて載せた。その一首目である。原文が「来にて」を「けにて」と記すのは東国の訛りで、方言のままに記されている。下野国の防人の歌にも、出立に際し母父に言葉をかけなかったことを悔やむ歌があり、同じ心が詠まれている。
作者の有度部牛麻呂は駿河国の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。
初句「水鳥の」は水鳥が一斉に飛び立つ様子から「立ち」にかかる枕詞である。
二句「立ちの急ぎに」は出立の慌ただしさの中での意で、防人として急に旅立つことを示す。
三句「父母に」は言葉をかけるべき相手を示す。
四句「物言はず来にて」は言葉もかけずに来てしまっての意で、別れの挨拶をしなかったことを悔いている。
結句「今ぞ悔しき」は「ぞ」の係り結びで、連体形「悔しき」で結ぶ。旅の途上の「今」になって込み上げる思いを強調している。
たち:出立。旅立ち
- 作者
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有度部牛麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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防人の堀江漕ぎ出る伊豆手船 楫取る間なく恋は繁けむ
- 次の歌
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畳薦牟良自が磯の離磯の 母を離れて行くが悲しさ