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我妹子と二人我が見しうち寄する
駿河の嶺らは恋しくめあるか

歌の意味
妻と二人で私が眺めた駿河の嶺々は、なんと恋しいことか。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4345

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 妻と二人で眺めた駿河の嶺々が恋しいと、故郷の山に妻との思い出を重ねた一首である。駿河国から進上された歌の九首目である。妻と並んで見た山という具体的な記憶を通して、故郷と妻とを一つに慕う心が表されている。「我妹子」を「わぎめこ」、「恋しく」を「くふしく」と記すのは訛りである。
 作者の春日部麻呂は駿河国の防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「我妹子と」は妻への親しみをこめた呼び方で、ともに見た相手を示す。
 二句「二人我が見し」は妻と二人で眺めたの意で、思い出の情景である。
 三句「うち寄する」は波が打ち寄せる意から「駿河」にかかる枕詞である。
 四句「駿河の嶺らは」の「ら」は接尾語で、駿河の山々を指す。富士山を思わせる表現である。
 結句「恋しくめあるか」は恋しいことであるよの意で、「か」は詠嘆である。

わぎもこ:妻や恋人を親しんで呼ぶ語
うちよする:「駿河」にかかる枕詞
作者
春日部麻呂
出典
万葉集
前の歌
忘らむて野行き山行き我れ来れど 我が父母は忘れせのかも
次の歌
父母が頭掻き撫で幸くあれて 言ひし言葉ぜ忘れかねつる