古典和歌stream

道の辺の茨のうれに延ほ豆の
からまる君をはかれか行かむ

歌の意味
道端の茨の先に這いまつわる豆のつるのように、私にからみついて離れないあなたを置いて、別れて行くのだろうか。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4352

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 茨にからまる豆のつるのように、すがりつくあなたを残して別れて行くのかと、別れの場面を身近な植物にたとえた一首である。上総国から進上された歌の六首目である。「君」については、主家の若君を指すとする説と、妻を指すとする説がある。「はかれ」は「わかれ」の訛りとされる。
 作者の丈部鳥は上総国天羽郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「道の辺の」は道端のの意で、日常の景を示す。
 二句「茨のうれに」の「うれ」は枝や茎の先端の意で、茨の先をいう。
 三句「延ほ豆の」は地を這う豆のつるで、初句から三句までが「からまる」を導く序詞である。
 四句「からまる君を」は序詞から転じ、すがりついて離れない人を表す。
 結句「はかれか行かむ」の「か」は疑問の係助詞で、別れて行くのだろうかと嘆いて結ぶ。上総の歌の三首目の結句「別れか行かむ」と同じ形である。

うまら:茨。とげのある低木
うれ:枝や茎の先端
作者
丈部鳥
出典
万葉集
前の歌
旅衣八重着重ねて寐のれども なほ肌寒し妹にしあらねば
次の歌
家風は日に日に吹けど我妹子が 家言持ちて来る人もなし