我が母の袖もち撫でて我がからに
泣きし心を忘らえのかも
- 歌の意味
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私の母が袖で私を撫でて、私のために泣いてくれたその心が忘れられないことだ。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4356
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
母が袖で撫でて自分のために泣いてくれた心が忘れられないと、別れの際の母の姿を詠んだ一首である。上総国から進上された歌の十首目である。駿河の防人の歌に父母が頭を撫でたことを詠む歌があり、撫でるしぐさに親の愛情を見る点で通じている。「忘らえの」は「忘らえぬ」の訛りである。
作者の物部乎刀良は上総国山辺郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。
初句「我が母の」は思い出の主である母を示す。
二句「袖もち撫でて」は袖で撫でての意で、母の慈しみのしぐさを描く。
三句「我がからに」は私のためにの意である。
四句「泣きし心を」は泣いてくれた心をの意で、母の悲しみを受け止めている。
結句「忘らえのかも」は忘れられないことだの意で、「かも」で詠嘆して結ぶ。前々歌の結句「忘れせぬかも」と同じく、忘れられない思いで結ぶ。
から:ゆえ。ため
- 作者
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物部乎刀良
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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よそにのみ見てや渡らも難波潟 雲居に見ゆる島ならなくに
- 次の歌
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葦垣の隈処に立ちて我妹子が 袖もしほほに泣きしぞ思はゆ