葦垣の隈処に立ちて我妹子が
袖もしほほに泣きしぞ思はゆ
- 歌の意味
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葦垣の隅に立って、妻が袖もぐっしょり濡れるほどに泣いていた姿が思い出される。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4357
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
葦垣の隅に立って袖をしとどに濡らして泣いた妻が思い出されると、別れの場面を鮮やかに描いた一首である。上総国から進上された歌の十一首目である。人目を避けて垣の陰で泣く妻の姿を具体的に描き、別れの悲しみを印象深く伝えている。
作者の刑部直千国は上総国市原郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。
初句「葦垣の」は葦を編んで作った垣で、家の周りの景を示す。
二句「隈処に立ちて」は垣の隅の物陰に立っての意で、人目を避ける妻の姿である。
三句「我妹子が」は妻を親しんで呼ぶ語である。
四句「袖もしほほに」の「しほほに」は涙でぐっしょり濡れる様子を表す。
結句「泣きしぞ思はゆ」は「ぞ」の係り結びで、連体形「思はゆ」で結ぶ。泣いた姿が自然に思い出されることを強調している。
くまと:物陰。奥まった所
あしかき:葦を編んで作った垣
- 作者
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刑部千国
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が母の袖もち撫でて我がからに 泣きし心を忘らえのかも
- 次の歌
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大君の命畏み出で来れば 我の取り付きて言ひし子なはも