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大君の命畏み出で来れば
我の取り付きて言ひし子なはも

歌の意味
大君のご命令を謹んで受けて出て来ると、私にすがりついて別れを言った、あの子よ。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4358

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 大君の命令を受けて出て来る時、すがりついて言葉をかけた妻よと、別れの場面を思い起こした一首である。上総国から進上された歌の十二首目である。前歌の泣く妻に続き、すがりつく妻の姿を描き、別れの記憶を重ねている。「我の」は「我に」の訛り、「子な」は「子」に接尾語の付いた形である。
 作者の物部竜は上総国種淮郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「大君の」は防人の歌に繰り返される句で、命令の主を示す。
 二句「命畏み」は命令を恐れ謹んでの意である。相模の防人の歌と同じ上二句である。
 三句「出で来れば」は家を出て来るとの意である。
 四句「我の取り付きて」は私にすがりついての意である。
 結句「言ひし子なはも」の「はも」は詠嘆で、言葉をかけてくれた妻を慕わしく思い出して結ぶ。

とりつく:すがりつく
作者
物部竜
出典
万葉集
前の歌
葦垣の隈処に立ちて我妹子が 袖もしほほに泣きしぞ思はゆ
次の歌
筑紫辺に舳向かる船のいつしかも 仕へまつりて国に舳向かも