防人に立たむ騒きに家の妹が
なるべきことを言はず来ぬかも
- 歌の意味
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防人として出立する騒ぎに紛れて、家の妻がこれから営んでいくべき暮らしの事を言わずに来てしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4364
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
出立の騒ぎに紛れて、家の妻がこれから営むべき仕事のことを言わずに来てしまったと、残した妻の暮らしを案じる一首である。常陸国から進上された歌の二首目で、前歌と同じ作者の歌である。「なるべきこと」は生業、暮らしの仕事を指すとされ、家を守る妻の苦労を思いやる心が表れている。「さきむり」は「さきもり」の、「いむ」は「いも」の訛りである。
作者の若舎人部広足は常陸国茨城郡の防人で、詳しい伝は残らない。
初句「防人に」は防人としての意で、自らの務めを示す。
二句「立たむ騒きに」は出立する騒ぎの中での意で、上総の防人の歌の「立ちの騒きに」と同じ情景である。
三句「家の妹が」は家に残る妻を指す。
四句「なるべきことを」の「なる」は生業を営む意で、妻が今後なすべき暮らしの仕事をいう。
結句「言はず来ぬかも」は言わずに来てしまったことだの意で、「かも」で後悔をこめて結ぶ。駿河の防人の歌が父母に物を言わずに来たことを悔いたのと同じ心である。
なる:生業を営む。農作業などの仕事をする
- 作者
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若舎人部広足
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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難波津に御船下ろ据ゑ八十楫貫き 今は漕ぎぬと妹に告げこそ
- 次の歌
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押し照るや難波の津ゆり船装ひ 我れは漕ぎぬと妹に告ぎこそ