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久慈川は幸くあり待て潮船に
ま楫しじ貫き我は帰り来む

歌の意味
久慈川よ、変わらず無事で待っていてくれ。潮路を行く船にたくさんの櫂を取り付けて、私は帰って来よう。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4368

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 久慈川よ、無事で待っていてくれ、多くの櫂を取り付けた船で帰って来ようと、故郷の川に呼びかけて帰還を誓った一首である。常陸国から進上された歌の六首目である。故郷の川を人に呼びかけるように擬人化し、必ず帰るという力強い決意を述べている。「さけく」は「さきく」の訛りである。
 作者の丸子部佐壮は常陸国久慈郡の防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「久慈川は」は作者の故郷を流れる川で、呼びかけの対象である。
 二句「幸くあり待て」は無事で待っていよの意で、川を擬人化している。ここで句切れとなる。
 三句「潮船に」は海を行く船にの意である。
 四句「ま楫しじ貫き」は多くの櫂を隙間なく取り付けての意で、勢いよく漕ぎ帰る様子を示す。
 結句「我は帰り来む」の「む」は意志で、必ず帰って来ようと結ぶ。

しじぬく:隙間なく数多く取り付ける
まかぢ:左右そろった櫂
作者
丸子部佐壮
出典
万葉集
前の歌
我が面の忘れもしだは筑波嶺を 振り放け見つつ妹は偲はね
次の歌
筑波嶺のさ百合の花の夜床にも 愛しけ妹ぞ昼も愛しけ