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霰降り鹿島の神を祈りつつ
皇御軍に我れは来にしを

歌の意味
鹿島の神に武運を祈りながら、天皇の兵士として私はやって来たのだ。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4370

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 鹿島の神に祈りながら、天皇の兵士として自分はやって来たのだと、防人としての誇りと覚悟を述べた一首である。常陸国から進上された歌の八首目で、前歌と同じ作者の歌である。前歌で妻への愛情を歌った作者が、ここでは武神である鹿島の神に祈る兵士としての自覚を述べ、二首で私情と公の務めとが対照されている。
 作者の大舎人部千文は常陸国那賀郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「霰降り」は霰の音がかしましいことから「鹿島」にかかる枕詞である。
 二句「鹿島の神を」は常陸国の鹿島神宮の神で、武神として信仰された。
 三句「祈りつつ」は武運と無事を祈りながらの意である。
 四句「皇御軍に」は天皇の兵士としての意で、防人の務めを誇らかに表す。
 結句「我れは来にしを」の「を」は詠嘆で、私はやって来たのだと結ぶ。前歌の「愛しけ」の情と対照をなしている。

すめらみくさ:天皇の兵士
あられふり:「鹿島」にかかる枕詞
作者
大舎人部千文
出典
万葉集
前の歌
筑波嶺のさ百合の花の夜床にも 愛しけ妹ぞ昼も愛しけ
次の歌
橘の下吹く風のかぐはしき 筑波の山を恋ひずあらめかも