今日よりは返り見なくて大君の
醜の御楯と出で立つ我れは
- 歌の意味
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今日からは後ろを振り返ることなく、大君の頑強な盾となって出立するのだ、私は。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4373
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
今日からは後ろを振り返らず、大君の頑強な盾となって出立するのだと、防人としての決意を力強く述べた一首である。左注によれば、下野国の防人部領使であった田口朝臣大戸が二月十四日に十八首を進上し、拙劣な歌を除いて載せた。その一首目である。防人の歌の多くが家族との別れを嘆くのに対し、この歌は私情を断ち切る覚悟を述べており、防人の歌の中でも広く知られている。
作者の今奉部与曽布は下野国の火長と記される防人で、詳しい伝は残らない。火長は十人ほどの兵を率いる長とされる。
初句「今日よりは」は今日からはの意で、出立の日を境に心を改めることを示す。
二句「返り見なくて」は後ろを振り返ることなくの意で、家族への未練を断つ覚悟を表す。
三句「大君の」は防人の歌に繰り返し現れる句で、仕える主を示す。
四句「醜の御楯と」の「醜」は頑強な、また自らをへりくだる意を含む語で、自分を大君を守る盾にたとえている。
結句「出で立つ我れは」は倒置で、出立するのは私だと主語を最後に置き、決意を強調して結ぶ。次歌も同じく「我れは」で結び、二首が並べられている。
しこ:頑強なもの。卑しめていう語でもある
みたて:盾の敬称
- 作者
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今奉部与曽布
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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橘の下吹く風のかぐはしき 筑波の山を恋ひずあらめかも
- 次の歌
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天地の神を祈りて猟矢貫き 筑紫の島を指して行く我れは