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天地の神を祈りて猟矢貫き
筑紫の島を指して行く我れは

歌の意味
天地の神々に祈って、猟矢を靫に差し入れ、筑紫の島を目指して行くのだ、私は。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4374

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 天地の神々に祈り、猟矢を携えて筑紫の島を目指して行くのだと、防人としての出立を勇ましく述べた一首である。下野国から進上された歌の二首目で、前歌と同じく火長の歌であり、私情を交えず兵士としての出立を歌っている。
 作者の大田部荒耳は下野国の火長と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「天地の」は天の神と地の神を合わせていい、祈りの広さを示す。
 二句「神を祈りて」は神々に無事と武運を祈っての意である。
 三句「猟矢貫き」は猟矢を靫に差し入れる意で、武装した出立の姿を示す。
 四句「筑紫の島を」は九州を島として捉えた表現で、防人の赴任地である。
 結句「指して行く我れは」は字余りで、倒置によって「我れは」を最後に置き、前歌の結句と同じ形で決意を示して結ぶ。

さつや:狩猟に用いる矢
ぬく:矢を靫などに差し通す
作者
大田部荒耳
出典
万葉集
前の歌
今日よりは返り見なくて大君の 醜の御楯と出で立つ我れは
次の歌
松の木の並みたる見れば家人の 我れを見送ると立たりしもころ