旅行きに行くと知らずて母父に
言申さずて今ぞ悔しけ
- 歌の意味
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このような長い旅に行くことになるとも知らないで、母や父に別れの言葉も申し上げずに来て、今になって悔しい。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4376
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
これほどの旅になるとも知らずに、母父に別れの言葉も申し上げずに来て今は悔しいと、旅の途上でこみ上げる後悔を詠んだ一首である。下野国から進上された歌の四首目である。駿河国の防人の歌に、出立の慌ただしさに父母に物を言わずに来て今は悔しいと詠む歌があり、同じ心を詠んでいる。「母父」と母を先に言うのは東国の歌に見える言い方である。
作者の川上臣老は下野国寒川郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。
初句「旅行きに」は旅に出ることにの意で、長い旅路を示す。
二句「行くと知らずて」は行くことになるとも知らないでの意である。
三句「母父に」は母と父にの意で、母を先に挙げている。
四句「言申さずて」は言葉を申し上げずにの意で、別れの挨拶をしなかったことをいう。
結句「今ぞ悔しけ」は「ぞ」の係り結びで、「悔しけ」は「悔しき」の訛りである。駿河の防人の歌の結句「今ぞ悔しき」とほぼ同じ句で結んでいる。
あもしし:母と父
- 作者
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川上老
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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松の木の並みたる見れば家人の 我れを見送ると立たりしもころ
- 次の歌
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母刀自も玉にもがもや戴きて みづらの中に合へ巻かまくも