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津の国の海の渚に船装ひ
立し出も時に母が目もがも

歌の意味
摂津の国の海の渚で船の支度を整えて、いよいよ出立する時に、母に一目会いたいものだ。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4383

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 摂津の海の渚で船を整え、いよいよ出立する時に母に一目会いたいと、船出を前にした思いを詠んだ一首である。左注によれば、下野国の防人部領使田口大戸が進上した歌の結びである。前の諸首と同じく船出の場面を詠み、最後に母を恋う思いで下野の歌群を閉じている。「立し出も」は「立ち出む」の訛りである。
 作者の丈部足人は下野国塩屋郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「津の国の」は摂津国の意で、難波の地を含む国である。
 二句「海の渚に」は海辺の波打ち際での意である。
 三句「船装ひ」は船の出航の支度を整える意で、常陸の防人の歌にも見える語である。
 四句「立し出も時に」は出立する時にの意である。
 結句「母が目もがも」の「目」は会うことの意、「もがも」は願望で、母に会いたいものだと結ぶ。

め:顔を合わせること。会うこと
作者
丈部足人
出典
万葉集
前の歌
ふたほがみ悪しけ人なりあたゆまひ 我がする時に防人にさす
次の歌
暁のかはたれ時に島蔭を 漕ぎ去し船のたづき知らずも