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暁のかはたれ時に島蔭を
漕ぎ去し船のたづき知らずも

歌の意味
夜明け前のほの暗い時刻に、島陰を漕いで去って行った船の行方もわからない。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4384

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 夜明け前のほの暗い時刻に、島陰を漕いで去った船の行方もわからないと、海上の心細さを詠んだ一首である。左注によれば、下総国の防人部領使であった少目県犬養宿禰浄人が二月十六日に二十二首を進上し、拙劣な歌を除いて載せた。その一首目である。先に出た船の行方を見失う不安に、自らの旅の行く末の知れなさを重ねている。「島蔭」を「しまかぎ」と記すのは訛りである。
 作者の他田日奉直得大理は下総国海上郡の助丁で、海上国造の一族と記される。詳しい伝は残らない。

 初句「暁の」は夜明け前の暗い時をいう。
 二句「かはたれ時に」は「彼は誰」と人の見分けがつかないほど薄暗い時の意で、明け方の薄明を表す。
 三句「島蔭を」は島の陰をの意で、船の進む航路を示す。
 四句「漕ぎ去し船の」は漕いで去って行った船のの意である。
 結句「たづき知らずも」の「たづき」は様子、手がかりの意で、船の行方もわからないと心細さをこめて結ぶ。

かはたれどき:人の見分けがつかないほど薄暗い時。明け方
たづき:様子や手がかり
作者
他田日奉得大理
出典
万葉集
前の歌
津の国の海の渚に船装ひ 立し出も時に母が目もがも
次の歌
行こ先に波なとゑらひ後方には 子をと妻をと置きてとも来ぬ