行こ先に波なとゑらひ後方には
子をと妻をと置きてとも来ぬ
- 歌の意味
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行く先では波よ、うねり立たないでおくれ。後には子も妻も置いて来たのだから。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4385
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
行く先では波よ立たないでくれ、後には子も妻も置いて来たのだからと、航海の無事を願った一首である。下総国から進上された歌の二首目である。前方の海と後方の故郷とを対置し、残した妻子のためにも無事に帰らねばならない思いを述べている。「行こ先」は「行く先」の、「後方」を「しるへ」と記すのは訛りである。
作者の私部石島は下総国葛飾郡の防人で、詳しい伝は残らない。
初句「行こ先に」は行く先にの意で、これから進む海路を示す。
二句「波なとゑらひ」の「な」は禁止、「とゑらふ」は波がうねり立つ意とされ、波よ立つなと願う。ここで句切れとなる。
三句「後方には」は後ろにはの意で、初句の「行こ先」と対をなしている。
四句「子をと妻をと」は子も妻もの意で、残した家族を並べ挙げている。
結句「置きてとも来ぬ」は置いて来てしまったの意で、置いて来たことを強く述べて結ぶ。
しりへ:後ろの方
とゑらふ:波がうねり立つ意とされる
- 作者
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私部石島
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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暁のかはたれ時に島蔭を 漕ぎ去し船のたづき知らずも
- 次の歌
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我が門の五本柳いつもいつも 母が恋すす業りましつしも