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大君の命にされば父母を
斎瓮と置きて参ゐ出来にしを

歌の意味
大君の命令であるので、父母を斎瓮とともに家に残して、参上して来たのだ。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4393

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 大君の命令なので、父母を斎瓮とともに残して参上して来たのだと、出立の事情を述べた一首である。下総国から進上された歌の十首目である。斎瓮は神を祀る神聖な瓶で、旅人の無事を祈って家に据えられた。命令に従った覚悟と、残した父母への思いとがともに表されている。「されば」は「あれば」の訛りである。
 作者の雀部広島は下総国結城郡の防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「大君の」は防人の歌に繰り返される句で、命令の主を示す。
 二句「命にされば」は命令であるのでの意で、出立の理由を示す。
 三句「父母を」は残してきた両親を示す。
 四句「斎瓮と置きて」は斎瓮とともに家に置いての意で、父母が無事を祈って斎瓮を据える姿を思わせる。
 結句「参ゐ出来にしを」の「を」は詠嘆で、参上して来たのだと結ぶ。

いはひへ:神を祀るための神聖な瓶
作者
雀部広島
出典
万葉集
前の歌
天地のいづれの神を祈らばか 愛し母にまた言とはむ
次の歌
大君の命畏み弓の共 さ寝かわたらむ長けこの夜を