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竜田山見つつ越え来し桜花
散りか過ぎなむ我が帰るとに

歌の意味
竜田山を眺めながら越えて来た桜の花は、散り過ぎてしまうだろうか、私が帰るころには。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4395

詞書「独り竜田山の桜花を惜しむ歌一首」
 竜田山を越えて来る時に見た桜は、自分が帰るころには散ってしまうだろうかと、旅先から帰途の花を惜しんだ一首である。左注によれば、二月十七日、兵部少輔大伴家持が作った三首の一首目である。防人の検閲のため難波に赴く途中で越えた竜田山の桜を、難波に滞在しながら思いやっている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、この時は兵部少輔であった。

 初句「竜田山」は大和と河内の境にある山で、奈良から難波へ向かう道筋にあたる。
 二句「見つつ越え来し」は眺めながら越えて来たの意で、行きの道で見た桜を思い起こしている。
 三句「桜花」は竜田山の桜で、一首の主題である。
 四句「散りか過ぎなむ」の「か」は疑問の係助詞で、連体形「む」で結ぶ。散り過ぎてしまうだろうかと案じる。
 結句「我が帰るとに」の「とに」は時にの意とされ、私が帰る時にはと倒置で添えて結ぶ。

とに:〜の時に。〜の間に
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
大君の命畏み弓の共 さ寝かわたらむ長けこの夜を
次の歌
堀江より朝潮満ちに寄る木屑 貝にありせばつとにせましを