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家思ふと寐を寝ず居れば鶴が鳴く
葦辺も見えず春の霞に

歌の意味
家のことを思って眠れずにいると、鶴の鳴く葦辺も見えない。春の霞のために。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4400

詞書は前の歌に続き「防人の情と為りて思ひを陳べて作る歌一首并せて短歌」
 家を思って眠れずにいると、鶴の鳴く葦辺も春の霞で見えないと、防人の眠れぬ夜を詠んだ反歌の二首目である。左注によれば、二月十九日、兵部少輔大伴家持の作である。前歌の鶴と霞の景を受け、声は聞こえるのに姿の見えない鶴に、故郷を思いながら何も見えぬ心細さを重ねている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、この時は兵部少輔であった。

 初句「家思ふと」は家のことを思っての意で、字余りである。
 二句「寐を寝ず居れば」は眠れずにいるとの意で、望郷の思いによる不眠を示す。
 三句「鶴が鳴く」は前歌の「鶴が音の」を受け、鶴の声のみが聞こえることを示す。
 四句「葦辺も見えず」は鶴のいる葦辺も見えないの意で、ここで句切れとなる。
 結句「春の霞に」は倒置で、春の霞のためにと理由を後から添えて結ぶ。前歌の「霞たなびき」を受けている。

い:眠り
あしへ:葦の生えている水辺
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
海原に霞たなびき鶴が音の 悲しき宵は国辺し思ほゆ
次の歌
唐衣裾に取り付き泣く子らを 置きてぞ来のや母なしにして