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草枕旅行く背なが丸寝せば
家なる我れは紐解かず寝む

歌の意味
草を枕の旅に行く夫が着物を着たまま寝るのならば、家にいる私も紐を解かずに寝よう。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4416

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 旅の夫が着物のまま寝るなら、家にいる私も紐を解かずに寝ようと、夫と苦労を分かち合おうとする妻の心を詠んだ一首である。武蔵国から進上された歌の四首目で、前歌の物部歳徳の妻の歌とされる。夫が妻を白玉にたとえて恋うのに対し、妻は夫の旅寝に心を合わせて応じている。「家」を「いは」と記すのは訛りである。
 作者の椋椅部刀自売は防人の妻と記され、前歌の作者物部歳徳の妻とされる。詳しい伝は残らない。

 初句「草枕」は「旅」にかかる枕詞である。
 二句「旅行く背なが」は旅に行く夫がの意で、「背な」は夫を親しんで呼ぶ語である。
 三句「丸寝せば」は着物を着たまま寝るならばの意で、旅寝の苦労を示す。
 四句「家なる我れは」は家にいる私はの意で、前歌の「家なる妹を」と対応している。
 結句「紐解かず寝む」は紐を解かずに寝ようの意で、「む」は意志である。夫と同じ姿で寝ることで心を通わせようとしている。

まろね:着物を着たまま寝ること
せな:夫を親しんで呼ぶ語
作者
椋椅部刀自売
出典
万葉集
前の歌
白玉を手に取り持して見るのすも 家なる妹をまた見てももや
次の歌
赤駒を山野にはがし捕りかにて 多摩の横山徒歩ゆか遣らむ