古典和歌stream

家ろには葦火焚けども住みよけを
筑紫に至りて恋しけ思はも

歌の意味
家では葦を燃やす粗末な暮らしだけれど住みよいので、筑紫に着いてからはさぞ恋しく思うことだろう。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4419

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 家では葦を燃やす粗末な暮らしだが住みよいので、筑紫に着いたら恋しく思うだろうと、貧しくも温かな家を思う一首である。武蔵国から進上された歌の七首目で、次歌はこの作者の妻の歌とされる。葦火を焚く素朴な暮らしを率直に述べ、そのような家こそ住みよいという実感がこもっている。「家ろ」を「いはろ」、「葦火」を「あしふ」と記すのは訛りである。
 作者の物部真根は武蔵国橘樹郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「家ろには」は家ではの意で、「ろ」は接尾語である。上野の防人の歌にも見える言い方である。
 二句「葦火焚けども」は葦を燃料として焚くけれどもの意で、粗末な暮らしを示す。
 三句「住みよけを」は住みよいのにの意である。
 四句「筑紫に至りて」は筑紫に着いてからの意で、赴任先での日々を思いやる。
 結句「恋しけ思はも」は恋しく思うことだろうの意で、故郷への思いを先取りして結ぶ。

あしび:葦を燃やす火
作者
物部真根
出典
万葉集
前の歌
我が門の片山椿まこと汝れ 我が手触れなな土に落ちもかも
次の歌
草枕旅の丸寝の紐絶えば 我が手と付けろこれの針持し