草枕旅の丸寝の紐絶えば
我が手と付けろこれの針持し
- 歌の意味
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草を枕の旅で着物のまま寝るうちに、衣の紐が切れたならば、私の手だと思って付けなさい、この針を持って。
- 鑑賞
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巻第二十 防人歌 4420
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
旅の丸寝で紐が切れたら、私の手だと思ってこの針で付けなさいと、針を手渡して夫を送り出す妻の心を詠んだ一首である。武蔵国から進上された歌の八首目で、前歌の物部真根の妻の歌とされる。妻が縫ってやれない代わりに針を託すという具体的なしぐさに、離れても寄り添おうとする情愛がこもっている。「付けろ」は命令形の東国の言い方、「針」を「はる」と記すのは訛りである。
作者の椋椅部弟女は防人の妻と記され、前歌の作者物部真根の妻とされる。詳しい伝は残らない。
初句「草枕」は「旅」にかかる枕詞である。
二句「旅の丸寝の」は旅で着物のまま寝ることの意で、前々歌の妻の歌の「丸寝」と同じ語である。
三句「紐絶えば」は衣の紐が切れたならばの意で、仮定条件である。
四句「我が手と付けろ」は私の手だと思って縫い付けなさいの意で、妻の手の代わりを託している。
結句「これの針持し」は倒置で、この針を持ってと、手渡す針を指し示して結ぶ。
まろね:着物を着たまま寝ること
- 作者
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椋椅部弟女
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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家ろには葦火焚けども住みよけを 筑紫に至りて恋しけ思はも
- 次の歌
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我が行きの息づくしかば足柄の 峰延ほ雲を見とと偲はね