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我が行きの息づくしかば足柄の
峰延ほ雲を見とと偲はね

歌の意味
私の旅立ちのことを思って、ため息をつくほどにつらかったならば、足柄の峰にはう雲を見ながら、私をしのんでおくれ。
鑑賞
巻第二十 防人歌 4421

詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
 私の旅立ちを思ってため息が出るなら、足柄の峰にはう雲を見て私をしのんでほしいと、妻に形見の景を託した一首である。武蔵国から進上された歌の九首目で、次歌はこの作者の妻の歌とされる。夫が越えて行く足柄の山にかかる雲を、自分を思うよすがとするよう願っている。常陸の防人の歌に筑波嶺を見て偲べと詠む歌があり、同じ発想である。「延ほ」は「延ふ」の、「見とと」は「見つつ」の訛りである。
 作者の服部於由は武蔵国都筑郡の上丁と記される防人で、詳しい伝は残らない。

 初句「我が行きの」は私の旅立ちのの意である。
 二句「息づくしかば」は嘆いてため息をつくようであればの意である。
 三句「足柄の」は相模と駿河の境の足柄山で、東国から西へ向かう道筋の峠である。
 四句「峰延ほ雲を」は峰にはうようにかかる雲をの意である。
 結句「見とと偲はね」の「ね」は相手に望む終助詞で、雲を見ながら私をしのんでほしいと願って結ぶ。

いきづく:ため息をつく。嘆く
作者
服部於由
出典
万葉集
前の歌
草枕旅の丸寝の紐絶えば 我が手と付けろこれの針持し
次の歌
我が背なを筑紫へ遣りて愛しみ 帯は解かななあやにかも寝も