天地の神に幣置き斎ひつつ
いませ我が背な我れをし思はば
- 歌の意味
-
天地の神々に幣を供えて身を慎んで祈りながら、無事でいてください、私の夫よ、私のことを思ってくださるのなら。
- 鑑賞
-
巻第二十 防人歌 4426
詞書は前の歌に続き「天平勝宝七歳乙未二月、相替りて筑紫の諸国に遣はさるる防人等が歌」
天地の神に幣を供えて祈りながら無事でいてください、私を思ってくれるならと、旅立つ夫に無事を願った妻の一首である。左注によれば、磐余諸君が書き写して家持に贈った昔の年の防人の歌八首の二首目である。私を思うなら無事でいよという言葉に、夫の身を案じる妻の切実な願いがこめられている。「天地」を「あめつし」と記すのは訛りである。
作者の名は伝わらない。防人の夫を送る妻の歌とされる。
初句「天地の」は天の神と地の神を合わせていう。下総の防人の歌の初句と同じ形である。
二句「神に幣置き」は神々に幣を供えての意である。
三句「斎ひつつ」は身を慎んで祈りながらの意で、旅の無事を祈る作法である。
四句「いませ我が背な」の「います」は「あり」の尊敬で、無事でいてくださいと夫に呼びかける。ここで句切れとなる。
結句「我れをし思はば」の「し」は強意で、私を思ってくださるならと倒置で添えて結ぶ。
ぬさ:神に捧げる供え物
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
防人に行くは誰が背と問ふ人を 見るが羨しさ物思ひもせず
- 次の歌
-
家の妹ろ我を偲ふらし真結ひに 結ひし紐の解くらく思へば