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大夫と思へるものを太刀佩きて
可尓波の田居に芹ぞ摘みける

歌の意味
立派な男子と思っておりましたのに、太刀を腰に帯びたまま、可尓波の田で芹を摘んでいらしたのですね。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4456

詞書は前の歌に続き「天平元年の班田の時に、使の葛城王、山背国より薩妙観命婦等の所に贈る歌一首」とあり、さらに「薩妙観命婦の報へ贈る歌一首」
 立派な男子と思っていたのに、太刀を佩いたまま可尓波の田で芹を摘んでいたのですねと、前歌の葛城王の贈歌に戯れて応じた一首である。左注によれば、この二首は左大臣が読み伝えたもので、左大臣とは葛城王のことである。勇ましい太刀姿と芹摘みという取り合わせのおかしみを突き、親しみをこめてからかっている。本巻の中で、昔の贈答を今に伝えた歌として置かれている。
 作者の薩妙観は元正太上天皇に仕えた女官で、命婦であった。

 初句「大夫と」は立派な男子との意で、葛城王を指す。
 二句「思へるものを」の「ものを」は逆接で、思っていたのにの意である。
 三句「太刀佩きて」は太刀を腰に帯びての意で、勇ましい姿を示す。
 四句「可尓波の田居に」の可尓波は山背国の地名で、田居は田のある所である。前歌の「田賜びて」を受けている。
 結句「芹ぞ摘みける」は「ぞ」の係り結びで、連体形「ける」で結ぶ。前歌の結句の「芹」を受け、芹を摘んでいたのですねと戯れて結ぶ。

たゐ:田のある所。田
せり:春の七草の一つ。水辺に生える草
作者
薩妙観
出典
万葉集
前の歌
あかねさす昼は田賜びてぬばたまの 夜のいとまに摘める芹これ
次の歌
住吉の浜松が根の下延へて 我が見る小野の草な刈りそね