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夕霧に千鳥の鳴きし佐保路をば
荒しやしてむ見るよしをなみ

歌の意味
夕霧の中で千鳥が鳴いていた佐保路を、荒れるにまかせてしまうのだろうか。あの方に会う手立てもないので。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4477

詞書「智努女王の卒りし後に、円方女王の悲傷して作る歌一首」
 夕霧に千鳥の鳴いた佐保路を荒れるにまかせてしまうのか、会う手立てもないのでと、智努女王の死を悼んだ一首である。詞書によれば、智努女王が亡くなった後に、円方女王が悲しんで作った歌である。左注によれば、この歌から四首は兵部大丞大原今城が伝え読んだもので、宴の席で古歌として披露されたものとみられる。故人のもとへ通った佐保路が、訪ねる人もなく荒れていくことを嘆いている。
 作者の円方女王は長屋王の娘とされる。智努女王については明らかでない。

 初句「夕霧に」は夕べの霧の中にの意で、佐保の景を示す。
 二句「千鳥の鳴きし」は千鳥が鳴いていたの意で、佐保川の千鳥は万葉集にしばしば詠まれる。
 三句「佐保路をば」は奈良の佐保の地を通る道で、故人のもとへ通った道である。
 四句「荒しやしてむ」の「や」は疑問の係助詞で、荒れるにまかせてしまうのだろうかの意である。ここで句切れとなる。
 結句「見るよしをなみ」の「み」は原因を表し、会う手立てがないのでと理由を倒置で添えて結ぶ。

さほぢ:奈良の佐保の地を通る道
よし:手立て。方法
作者
円方女王
出典
万葉集
前の歌
奥山のしきみが花の名のごとや しくしく君に恋ひわたりなむ
次の歌
佐保川に凍りわたれる薄ら氷の 薄き心を我が思はなくに