古典和歌stream

あしひきの八つ峰の椿つらつらに
見とも飽かめや植ゑてける君

歌の意味
山々の峰に咲く椿をつくづくと見ても飽きることがあろうか。その椿を植えたあなたを。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4481

詞書「三月四日、兵部大丞大原真人今城の宅にして宴する歌一首」
 山の峰の椿をつくづくと見ても飽きることがあろうか、その椿を植えたあなたをと、宴の主人今城を讃えた一首である。詞書によれば、天平勝宝九歳三月四日、兵部大丞大原今城の邸で開いた宴の歌である。左注によれば、兵部少輔大伴家持が庭に植えた椿に寄せて作った。椿の「つば」の音を「つらつら」に響かせ、主人への親愛を述べている。
 作者の大伴家持は大伴旅人の子で、この時は兵部少輔であった。

 初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞で、ここでは「八つ峰」にかかっている。
 二句「八つ峰の椿」は多くの峰に咲く椿の意で、山の椿を庭に移し植えたものとされる。初句と二句が「つらつらに」を導く序詞である。
 三句「つらつらに」はつくづくと、念入りにの意である。
 四句「見とも飽かめや」の「めや」は反語で、見ても飽きることがあろうか、ないの意である。ここで句切れとなる。
 結句「植ゑてける君」は椿を植えたあなたよと体言で結び、主人今城を讃えている。

やつを:多くの峰
つらつら:つくづくと。念入りに
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
畏きや天の御門を懸けつれば 音のみし泣かゆ朝夕にして
次の歌
堀江越え遠き里まで送り来る 君が心は忘らゆましじ