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梅の花香をかぐはしみ遠けども
心もしのに君をしぞ思ふ

歌の意味
梅の花の香りがかぐわしいので、遠く離れていても、心もしおれるほどにあなたのことを思う。
鑑賞
巻第二十 雑歌 4500

詞書は前の歌に続き「二月、式部大輔中臣清麻呂朝臣の宅にして宴する歌十五首」
 梅の花の香りがかぐわしいので、遠くにいても心もしおれるほどにあなたを思うと、主人清麻呂を慕う心を詠んだ一首である。左注によれば治部大輔市原王の作である。梅の香りに主人の人柄をなぞらえ、離れていても心ひかれる思いを述べている。
 作者の市原王は安貴王の子で、志貴皇子の曾孫にあたる。この時は治部大輔であった。

 初句「梅の花」は宴の庭の梅で、一首目以来の景物である。
 二句「香をかぐはしみ」の「み」は原因を表し、香りがかぐわしいのでの意である。
 三句「遠けども」は遠く離れているけれどもの意で、逆接で下の句へ転じる。
 四句「心もしのに」は心もしおれるほどにの意で、深く思うさまを表す。
 結句「君をしぞ思ふ」は「ぞ」の係り結びで、連体形「思ふ」で結ぶ。「し」で強め、あなたを思うと結ぶ。

しのに:しおれるように。しみじみと
作者
市原王
出典
万葉集
前の歌
我が背子しかくし聞こさば天地の 神を祈ひ祷み長くとぞ思ふ
次の歌
八千種の花は移ろふ常盤なる 松のさ枝を我れは結ばな