咲き咲かず我になつげそ桜花
人づてにやは聞かんと思ひし
- 歌の意味
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咲いたとも咲かないとも、私に告げないでおくれ、あの桜の花のことは。人づてに聞くことになろうとは、思いもしなかったのだから。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 61
詞書「朱雀院の桜のおもしろきことと、延光朝臣の語り侍りければ、見るよしもあらましものをなど、昔を思ひ出でて」
朱雀院の桜が見事だと聞かされ、かつては自ら見ることもできた桜を、今は人づてに聞くしかない身の上を嘆いた歌である。咲いたかどうかを告げないでほしいという言葉に、昔を懐かしむ思いとかなわぬ寂しさがこもっている。
詞書によれば、源延光が朱雀院の桜の見事さを語ったので、昔なら見る手立てもあっただろうにと、昔を思い出して詠んだものである。延光は代明親王の子で、朱雀院の近くに仕えた人物である。
作者の「大将御息所」が誰を指すかについては定説を見ない。御息所は天皇や皇太子の寝所に仕えた女御、更衣などの呼び名で、「大将」は父や縁者の官職にちなむものと見られる。
初句「咲き咲かず」は、咲いたとも咲かないとも、の意で、どちらの知らせも聞きたくない心を表す。
二句「我になつげそ」の「な〜そ」は禁止を表し、私に告げないでおくれ、の意である。ここで句切れとなる。
三句「桜花」は、延光が語った朱雀院の桜を示す。
四句「人づてにやは」の「やは」は反語で、人づてに聞くことになろうか、いやそうは思わなかった、の意を表す。本巻の第五十七首の「言伝」が風に託す便りであったのに対し、本歌は人づての便りを拒んでいる。
結句「聞かんと思ひし」の「ん」は四句の「やは」を受けた連体形で、係り結びをなす。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、連体止めによって余韻を残し、かつて自ら桜を見ていたころを振り返っている。
ひとづて:人を介して伝え聞くこと
みやすんどころ:天皇や皇太子の寝所に仕えた女御や更衣などの呼び名
- 作者
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大将御息所
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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帰る雁雲路にまどふ声すなり 霞吹き解けこのめはる風
- 次の歌
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春来れば木隠れ多き夕月夜 おぼつかなしも花陰にして