帰る雁雲路にまどふ声すなり
霞吹き解けこのめはる風
- 歌の意味
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北へ帰っていく雁が、雲の中の道に迷っている声がする。霞を吹きほどいておくれ、木の芽をふくらませる春風よ。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 60
詞書「帰る雁を聞きて」
北へ帰る雁が霞のために空の道に迷って鳴く声を聞き、木の芽をふくらませる春風に、霞を吹き払ってやってほしいと呼びかけた歌である。去っていく雁を思いやる優しさと、春風への期待が込められている。
詞書によれば、北へ帰っていく雁の声を聞いて詠んだものである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「帰る雁」は、春になって北へ帰っていく雁を示す。本巻の第七十五首にも「かり」が詠まれている。
二句「雲路にまどふ」の「雲路」は雁の飛ぶ空の道で、霞にさえぎられて道に迷うさまを表す。
三句「声すなり」の「なり」は音や声による推定を表し、迷っているらしい声がする、の意である。ここで句切れとなる。
四句「霞吹き解け」の「解け」は命令形で、立ちこめる霞を吹きほどいてくれ、と呼びかけている。
結句「このめはる風」の「はる」は、木の芽が「張る」意と「春」を掛けた掛詞である。木の芽をふくらませる春風への呼びかけで、体言止めとなっている。
はる:木の芽がふくらむ意の「張る」と、「春」を掛ける
くもぢ:雁や鳥が空を行く道
このめ:木の芽
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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相思はでうつろふ色を見るものを 花に知られぬながめするかな
- 次の歌
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咲き咲かず我になつげそ桜花 人づてにやは聞かんと思ひし