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都人来ても折らなんかはづ鳴く
県の井戸の山吹の花

歌の意味
都の人よ、ここに来て折っておくれ。蛙の鳴く県の井戸の、この山吹の花を。
鑑賞
巻第三 春歌下 104

詞書「県の井戸といふ家より、藤原治方につかはしける」
 蛙が鳴き山吹の咲く我が家に、都の人であるあなたも来て花を折ってほしいと誘った歌である。山吹の盛りを告げながら、相手の訪れを待つ思いを込めている。
 詞書によれば、県の井戸という名の家から、藤原治方に贈ったものである。県の井戸は家の名で、その所在については諸説がある。かはづと山吹の取り合わせは、山城国の井手の歌枕に通じるものである。
 作者の「橘のきんひらが女」は橘公平の娘である。名は伝わらない。

 初句「都人」は、都の人の意で、ここでは歌を贈った藤原治方を指す。
 二句「来ても折らなん」の「なん」は他に対する願望で、来て折ってほしい、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「かはづ鳴く」の「かはづ」は、清らかな声で鳴くかじか蛙を指す。本巻の第百二十二首も、かはづと山吹を取り合わせている。
 四句「県の井戸の」は、作者の住む家の名を示す。
 結句「山吹の花」は体言止めで、二句に対する倒置となっている。本巻の第百八首、第百二十一首、第百二十二首にも山吹が詠まれている。

かはづ:かじか蛙、また蛙
作者
橘公平女
出典
後撰和歌集
前の歌
あたら夜の月と花とを同じくは あはれ知れらん人に見せばや
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今よりは風にまかせむ桜花 散る木のもとに君とまりけり