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散ることの憂きも忘れてあはれてふ
事を桜に宿しつるかな

歌の意味
花が散ることのつらさも忘れて、「ああ、すばらしい」という言葉を、すっかり桜に預けてしまったことだ。
鑑賞
巻第三 春歌下 133

詞書「敦実の親王の花見侍りける所にて」
 花が散るつらさも忘れて、「あはれ」という感動の言葉をすべて桜に託してしまったと詠んだ歌である。散ることを嘆くよりも、目の前の花に心を奪われた感動を表している。
 詞書によれば、敦実親王が花見をした所で詠んだものである。敦実親王は宇多天皇の皇子で、管弦や和歌に通じた人である。
 作者の源仲宣は源氏の人であるが、経歴は詳らかでない。

 初句「散ることの」は、花が散ることの、の意である。
 二句「憂きも忘れて」の「憂き」はつらさの意で、散るつらさも忘れて、の意である。
 三句「あはれてふ」の「あはれ」は深く心を動かされたときに発する感動の言葉で、「てふ」は「といふ」の約である。
 四句「事を桜に」の「事」は言葉の意で、「あはれ」という言葉を桜に、の意である。
 結句「宿しつるかな」の「宿す」は、とどめておく、預ける意で、「かな」は詠嘆を表す。

やどす:とどめておく、預ける
作者
源仲宣
出典
後撰和歌集
前の歌
いつの間に散り果てぬらん桜花 面影にのみ色を見せつつ
次の歌
桜色に着たる衣の深ければ 過ぐる春日も惜しけくもなし