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いつの間に散り果てぬらん桜花
面影にのみ色を見せつつ

歌の意味
いつの間にすっかり散ってしまったのだろうか、桜の花は。今はただ面影の中にだけ、その色を見せていて。
鑑賞
巻第三 春歌下 132

詞書「桜の花の散るを見て」
 いつの間にか桜はすっかり散ってしまい、今は心に浮かぶ面影にだけその色を見せていると詠んだ歌である。散り果てた花を惜しみ、なお心の中に残る花の姿を見つめている。
 詞書によれば、桜の花の散るのを見て詠んだものである。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、甲斐少目や和泉大掾などを歴任した。三十六歌仙の一人である。

 初句「いつの間に」は、いつの間に、の意で、気づかぬうちに散ってしまった驚きを表す。
 二句「散り果てぬらん」の「散り果つ」はすっかり散ってしまう意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。ここで句切れとなる。
 三句「桜花」は呼びかけである。本巻の桜の歌は、このあたりから春の終わりの歌へと移っていく。
 四句「面影にのみ」の「面影」は心に浮かぶ姿の意で、今はただ面影にだけ、の意である。
 結句「色を見せつつ」の「つつ」は継続で、言いさしの形で余韻を残している。

おもかげ:心に浮かぶ姿
ちりはつ:すっかり散ってしまう
作者
凡河内躬恒
出典
後撰和歌集
前の歌
鴬の糸に縒るてふ玉柳 吹きな乱りそ春の山風
次の歌
散ることの憂きも忘れてあはれてふ 事を桜に宿しつるかな