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花すすきほに出づることもなき宿は
昔しのぶの草をこそ見れ

歌の意味
花すすきが穂を出すように、表立って華やぐこともない私の家では、昔をしのぶという、しのぶ草ばかりを見ている。
鑑賞
巻第六 秋歌中 288

詞書「人のもとに、尾花のいと高きをつかはしたりければ、返事に忍ぶ草を加へて」
 花すすきが穂を出すように表立って華やぐこともない自分の家では、昔をしのぶ、しのぶ草ばかりを見ていると詠んだ歌である。高く穂を出した尾花を贈られたのに対し、わが家の寂しさと昔を懐かしむ心を返している。
 詞書によれば、作者が人から高く伸びた尾花を贈られたので、返事にしのぶ草を添えて送ったものである。次歌は伊勢の返歌で、尾花を贈ったのが伊勢であったことがわかる。
 作者の「中宮宣旨」は、中宮に仕えて宣旨の役を務めた女房を呼んだもので、誰を指すかについて定説を見ない。宣旨は、主人の命令を取り次ぐ役目である。

 初句「花すすき」は、穂の出たすすきで、詞書の尾花を受けている。
 二句「ほに出づることも」の「ほ」は、すすきの「穂」と、表にあらわれる意の「秀」を掛けた掛詞である。表立って華やぐことも、の意で、字余りである。巻第五の第二百六十七首も初句に「ほには出でぬ」と同じ掛詞を置き、花すすきを詠んでいる。
 三句「なき宿は」は、ない家では、の意である。
 四句「昔しのぶの」の「しのぶ」は、昔を「偲ぶ」意と、「忍ぶ草」の名を掛けた掛詞で、詞書のしのぶ草を受けている。
 結句「草をこそ見れ」は、草ばかりを見ている、の意で、係助詞「こそ」と已然形「見れ」が係り結びをなす。本巻の第二百八十五首の結句「色をこそ見れ」と同じ形である。

ほ:すすきの「穂」と、表にあらわれる意の「秀」を掛ける
しのぶ:昔を「偲ぶ」意と、「忍ぶ草」の名を掛ける
しのぶぐさ:シダの一種、軒端などに生え、昔をしのぶ意に寄せて詠まれる
をばな:穂の出たすすき
せんじ:主人の命令を取り次ぐ役目、またその役の女房
作者
中宮宣旨
出典
後撰和歌集
前の歌
人はいさ事ぞともなきながめにぞ 我は露けき秋も知らるる
次の歌
宿もせに植ゑなめつつぞ我は見る 招く尾花に人やとまると