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人はいさ事ぞともなきながめにぞ
我は露けき秋も知らるる

歌の意味
あの人はさあどうだかわからないが、何ということもない物思いの長雨のうちに、私は涙がちな秋であることも思い知らされる。
鑑賞
巻第六 秋歌中 287

詞書「男のもとにつかはしける」
 あなたはどうだかわからないが、何ということもなく物思いにふける長雨の日々に、私は涙に濡れる秋であることを思い知らされると訴えた歌である。「ながめ」に「眺め」と「長雨」を掛け、相手を待ちながら過ごす秋の寂しさを表している。
 詞書によれば、男のもとへ送ったものである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書から女の歌であることがわかる。

 初句「人はいさ」の「いさ」は、さあどうだか、の意で、相手の心はわからないと突き放している。
 二句「事ぞともなき」は、何ということもない、取り立てて理由のない、の意である。
 三句「ながめにぞ」の「ながめ」は、物思いにふけりながら見やる「眺め」と、降り続く「長雨」を掛けた掛詞である。「ぞ」は係助詞である。
 四句「我は露けき」は、私は涙に濡れがちな、の意で、「露」は「長雨」の縁語である。
 結句「秋も知らるる」の「るる」は自発の助動詞「る」の連体形で、三句の「ぞ」と係り結びをなす。秋であることも自然と思い知られる、の意である。

ながめ:物思いにふけりながら見やる「眺め」と、降り続く「長雨」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
心なき身は草葉にもあらなくに 秋来る風に疑はるらん
次の歌
花すすきほに出づることもなき宿は 昔しのぶの草をこそ見れ