あふくまの霧とはなしに夜もすがら
たちわたりつつよをも経るかな
- 歌の意味
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阿武隈川に立ちこめる霧というわけでもないのに、一晩中あなたの部屋のあたりに立ち続けながら、逢えないまま夜を明かし、月日を過ごしていることだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 607
詞書「女の曹司に夜々立ち寄りつつ物など言ひて後」
阿武隈川の霧でもないのに一晩中立ち続けて夜を明かし、月日を過ごしている、と詠んだ歌である。夜ごとに女の部屋を訪れても思うように逢えず、立ち尽くすばかりの身を霧にたとえている。
詞書によれば、女の部屋に夜ごとに立ち寄って言葉を交わしたあとに送った歌である。
作者の藤原輔文は、平安時代前期の人物で、経歴は詳しく伝わらない。
初句「あふくまの」は、陸奥の国の歌枕である阿武隈川をいい、その名に「逢ふ」を掛けた掛詞である。
二句「霧とはなしに」は、霧というわけではないのに、の意である。
三句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。
四句「たちわたりつつ」は、霧が一面に立ちこめる意と、女の部屋のあたりに立ち続ける意を掛けた掛詞で、「つつ」は反復と継続を表す。
結句「よをも経るかな」の「よ」は、「夜」と「世」を掛けた掛詞で、夜を明かし、月日を過ごすことだ、の意である。「かな」は詠嘆の終助詞である。
あふくま:陸奥の国の阿武隈川、「逢ふ」を掛ける
たちわたる:霧が一面に立ちこめる意と、立ち続ける意を掛ける
よ:「夜」と「世」を掛ける
ざうし:宮中などで女房に与えられた部屋
- 作者
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藤原輔文
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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隠れ沼に忍びわびぬる我が身かな 井手の蛙となりやしなまし
- 次の歌
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あやしくも厭ふにはゆる心かな いかにしてかは思ひ止むべき