天雲に鳴きゆく雁のおとにのみ
聞きわたりつつ逢ふよしもなし
- 歌の意味
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空の雲の中を鳴きながら渡っていく雁の声のように、うわさにばかり聞き続けて、逢う手だてもない。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 637
詞書「志ありける女につかはしける」
雲の中を鳴いて渡る雁の声のように、うわさにばかり聞き続けて逢う手だてもない、と詠んだ歌である。遠い空を行く雁の声に、手の届かない相手への思いを重ねている。
詞書によれば、思いを寄せていた女に送った歌である。次歌の第六百三十八首も同じ詞書を持つ。
作者の橘公頼は、橘広相の子で、中納言を務め、大宰権帥を兼ねた。
初句「天雲に」は、空の雲の中を、の意である。
二句「鳴きゆく雁の」は、鳴きながら渡っていく雁の、の意で、初句から二句までが三句の「おと」を導く序詞となっている。
三句「おとにのみ」の「おと」は、雁の鳴く声と、うわさの意を掛けた掛詞である。
四句「聞きわたりつつ」は、聞き続けて、の意で、「わたる」は雁が空を渡る意を響かせている。
結句「逢ふよしもなし」は、逢う手だてもない、の意である。
あまぐも:空の雲
おと:雁の鳴く声の意と、うわさの意を掛ける
よし:手だて、方法
- 作者
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橘公頼
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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河と見て渡らぬなかに流るるは 言はで物思ふ涙なりけり
- 次の歌
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住の江の浪にはあらねど世とともに 心を君に寄せわたるかな