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住の江の浪にはあらねど世とともに
心を君に寄せわたるかな

歌の意味
住の江の波ではないけれど、いつまでも絶えることなく、私は心をあなたに寄せ続けていることだ。
鑑賞
巻第十 恋歌二 638

詞書「志ありける女につかはしける」
 住の江の波ではないが、いつまでも心をあなたに寄せ続けている、と詠んだ歌である。絶え間なく岸に寄せる住の江の波に、変わらず相手を思い続ける心を重ねている。
 詞書によれば、前歌と同じく、思いを寄せていた女に送った歌である。本巻の第六百五十三首、第六百七十二首も住の江を詠んでいる。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。

 初句「住の江の」は、摂津の国の歌枕である住の江の、の意である。
 二句「浪にはあらねど」は、波ではないけれど、の意である。
 三句「世とともに」は、いつも、いつまでも絶えることなく、の意である。
 四句「心を君に」は、心をあなたに、の意である。
 結句「寄せわたるかな」は、寄せ続けていることだ、の意で、「寄す」は波の縁語、「かな」は詠嘆の終助詞である。

すみのえ:摂津の国の住吉の入り江、松と波で知られる歌枕
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
天雲に鳴きゆく雁のおとにのみ 聞きわたりつつ逢ふよしもなし
次の歌
見ぬほどに年のかはれば逢ふことの いやはるばるに思ほゆるかな