河と見て渡らぬなかに流るるは
言はで物思ふ涙なりけり
- 歌の意味
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川だと見て渡ろうとしない二人の仲に流れているのは、口に出さずに物思いをしている私の涙なのだった。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 636
詞書「同じ所にて見交はしながら、え逢はざりける女に」
川だと見て渡らない二人の仲に流れているのは、言わずに物思いする涙だった、と詠んだ歌である。同じ所にいて顔を合わせながら逢えない隔たりを、二人の間を流れる涙の川にたとえている。
詞書によれば、同じ所で互いに顔を見交わしながら、逢うことのできなかった女に送った歌である。本巻の第六百十首からの涙川の歌と同じく、涙を川に見立てている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「河と見て」は、川だと見て、の意である。
二句「渡らぬなかに」の「なか」は、川を渡らない「中」と、二人の「仲」を掛けた掛詞である。
三句「流るるは」は、流れているのは、の意である。
四句「言はで物思ふ」は、口に出さずに物思いをする、の意である。
結句「涙なりけり」は、涙なのであった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表している。
なか:川を渡らない「中」の意と、二人の「仲」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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跡見れば心なぐさの浜千鳥 今は声こそ聞かまほしけれ
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天雲に鳴きゆく雁のおとにのみ 聞きわたりつつ逢ふよしもなし