跡見れば心なぐさの浜千鳥
今は声こそ聞かまほしけれ
- 歌の意味
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浜千鳥の足跡のようなあなたの筆跡を見ると、名草の浜の名のように心が慰められる。今度はその声こそ聞きたいものだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 635
詞書「返り事せざりける女の、文をからうじて得て」
浜千鳥の足跡のような筆跡を見て心が慰められた、今度は声を聞きたい、と詠んだ歌である。ようやく返事をくれた女に、さらに直接逢って声を聞きたいと願っている。
詞書によれば、返事をくれなかった女から、やっとのことで手紙を受け取って詠んだ歌である。鳥の足跡を文字に見立てる趣向で、本巻の第六百九十五首も浜千鳥の跡を手紙に重ねている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「跡見れば」は、千鳥の足跡のような筆跡を見ると、の意で、「跡」は三句の「浜千鳥」の縁語である。
二句「心なぐさの」の「なぐさ」は、紀伊の国の歌枕である名草の浜と、心が「慰さ」む意を掛けた掛詞である。
三句「浜千鳥」は、浜辺にいる千鳥で、その足跡を文字に見立てている。本巻の第六百五十四首と第六百九十五首も「浜千鳥」を詠んでいる。
四句「今は声こそ」は、今度は声を、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。千鳥の鳴き声に、相手の声を重ねている。
結句「聞かまほしけれ」は、聞きたいものだ、の意で、四句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ係り結びとなっている。
なぐさ:紀伊の国の「名草の浜」と、「慰さ」を掛ける
はまちどり:浜辺にいる千鳥、その足跡を文字に見立てる
かへりごと:返事
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人はいさ我はなき名の惜しければ 昔も今も知らずとを言はん
- 次の歌
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河と見て渡らぬなかに流るるは 言はで物思ふ涙なりけり