世の常の音をし泣かねば逢ふことの
涙の色も殊にぞありける
- 歌の意味
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世間並みの泣き方では泣かないので、逢うことを思って流す涙の色も、格別なものであったのだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 669
詞書「題しらず」
世間並みに声をあげて泣くのではないので、逢うことを思って流す涙の色も格別だった、と詠んだ歌である。人並みではない深い恋の嘆きを、色の変わった涙に託して表している。
本巻の第六百四十五首、第六百六十一首の「音に泣く」と同じく、恋の涙を声と結びつけて詠んでいる。
作者の藤原治方は、平安時代中期の人物で、経歴は詳しく伝わらない。
初句「世の常の」は、世間並みの、の意である。
二句「音をし泣かねば」は、声をあげて泣かないので、の意で、「し」は強めの副助詞である。
三句「逢ふことの」は、逢うことを思って流す、の意である。
四句「涙の色も」は、涙の色も、の意で、恋の嘆きが深まると涙が紅に染まるとされたことを踏まえている。
結句「殊にぞありける」は、格別であったのだ、の意で、「ぞ」は強めの係助詞、連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
ねをなく:声をあげて泣く
- 作者
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藤原治方
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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思ひきやあひ見ぬことをいつよりと 数ふばかりになさん物とは
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白浪の寄する磯間を漕ぐ舟の 楫取りあへぬ恋もするかな